かつて映像と音楽の出会いは「サイレント映画」でした。日本では活動弁士が映画の解説をしていましたが、海外ではピアノやオーケストラやバンドで音楽を上映に合わせて伴奏していたのです。

現在、映像に音楽を合わせる作業は、もっぱら編集作業の一部として完全に組み込まれ、誰でも自由度の高い音合わせができることで、ハイレベルな作品が次々と生み出されています。この時代に何かビデオ用音楽集にできる新しい提案、要素はないかと思案の末にたどり着いた一つの発想が、このサイレント映画の上映スタイル、「ライヴ感」です。今や殆どのポピュラー音楽が、コンピューターでのいわゆる「打ち込み」を基本にしています。もちろん近年の驚異的な技術発達により、生楽器のシミュレート精度やゆらぎ感の再現性が高くなり、ちょっと聞いただけでは生演奏と聞き分けがつかないレベルになっています。しかし打ち込みでは極めて再現が難しいものがあります。それがライヴ感。「生演奏」の空気です。

この「Alive」の楽曲は、全てクラシックとジャズを学び即興演奏を得意とするピアニスト、今村友子さんによる弾きおろし生演奏です。各楽曲の制作にあたり、実際にビデオを撮影される方の作品、その世界観にマッチする感覚の音楽をご提供するために、実際に今村さんに映像作品をご覧いただきながら、即興でピアノを演奏して頂く方式をとりました。また、春・夏・秋・冬、歴史紀行という、ビデオ撮影に馴染みの深いテーマに添い、そこから生まれるイメージを即興演奏して頂いた楽曲も収録しています。

ピアノも新進メーカーながら、あのストラディバリウスと同じ素材を用い、職人の緻密な技巧によって作られる「歴史上最も贅沢なピアノ」＜FAZIOLI＞を用い、収録ホールも、豊かな響きを生み出す建築設計により著名アーティストから絶大な支持を集める＜仙川アヴェニューホール＞を借りきって録音。考えうる最高の環境で生み出された楽曲からは、広い意味でのライヴ感や映像に血肉を与えるリアリティが溢れ出ています。まさに、映像に命が吹き込まれる感覚「Alive」（アライヴ＝生きている、生命を有する）です。